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入社後の離脱を防ぐ!ニューノーマル時代のオンボーディング施策とは

2021.05.12

カテゴリ: 採用

2020年は、コロナによって社会全体が先の見えない状況に陥り、企業にとっても必然的に変化を強いられた1年だったかと思います。採用人事の領域においても多くの変化がありました。コロナ禍という状況が1年以上続く中、人事担当者はなんとか対応した昨年とは違い、このコロナ禍の状態をニューノーマルとして体制や環境の準備を整えていく必要があるのではないでしょうか?

 

そこで今回は、リモートワーク環境も定着しつつあるコロナ禍で、改めて見直す価値のある「オンボーディング」の重要性や、課題点を踏まえた上での考えるべきポイント、具体的な施策例などを紹介します。

 

採用環境も目まぐるしく変化をしていく中で、ようやく組織の一員となった人材の離職を防ぐのは勿論、いち早く即戦力人材として活躍してもらうためにも、今一度、自社の「オンボーディング」体制を見直す参考にしてみてください。

 

1. オンボーディングの目的とは?

「オンボーディング」(On-boarding)とは、新たに採用した人材に対し、受け入れから組織への定着、戦力となるよう組織に慣れさせる一連のプロセスのことを指します。

近年、オンボーディングが注目されている理由として、社会状況の変化や採用・就業のオンライン化なども起因したことにより人材の転職意欲も年々高まり、中途採用の強化による人材の流動化がより一層進む中で、「早期離職を防ぐ」観点や、サポート体制を強化することで採用した人材がいち早く「即戦力として活躍できる」という点にあります。

 

新卒入社・中途入社によって、入社時の教育・研修内容や現場への配属時期などに多少の差はありますが、組織の定着へとつながる従業員満足度やパフォーマンスの向上のためには、既存社員の協力を仰ぎながら全社的に継続的なフォローを行える環境が、新卒・中途入社問わず、共通して新入社員に必要であるといえます。

 

2. 2020年、コロナ禍でのオンボーディングの実態

コロナ禍でのオフィス状況

2-1.新卒入社者の場合

株式会社パーソル総合研究所は、2020年度新卒入社者のオンボーディング実態調査を実施しました。コロナ禍での新卒入社者のオンボーディング状況について、以下の様な結果がでています。

 

  • ・ 4~5月の緊急事態宣言中をピークに、多くの企業が新入社員に在宅勤務を実施し、約半数が研修を、約3割がOJTをオンライン形式で実施
  • ・ 在宅勤務を実施した群は、実施しなかった群よりもコミュニケーションに関する施策の実施率や、懇親会の頻度が多い傾向があり、対策が打たれていた
  • ・ 在宅勤務による体力面や精神面の負担の少なさを好意的に評価する声が多かった一方で、オンライン化に伴うコミュニケーション不足に不満をもらす声が多く挙がった

参考:パーソル総合研究所 「新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)」

 

 

在宅勤務によって、新卒入社者の研修やOJTをオンライン形式で実施することは初めての取り組みとなった企業も多く、特にコミュニケーションに関する施策に対しては、実施頻度に重点は置いたものの、対面と比較すると、オンライン環境下では未だ満足のいく状態とは言い難く、今後も検討の余地がある課題であるといえます。

 

2-2.中途入社者の場合

エン・ジャパン株式会社は、同社の運営する⼈事向け総合情報サイト『⼈事のミカタ』利用企業を対象とした「中途⼊社者の定着施策(オンボーディング)」実態調査を実施しました。新卒入社者と比べ、予算や人員が割けずに力を入れられていないとの回答も出る中、以下の様な状況が見られています。

 

  • ・中途⼊社者に実施しているオンボーディング施策として最も多いのは「⼊社1ヵ月以内の導⼊研修」、次いで「ランチや飲み会などの歓迎イベント」の実施
  • ・中途入社者の自社への定着率については「定着率が高い」と回答する企業は3割にとどまり、戦力化してからより良い待遇を求めて転職してしまう課題も発生
  • ・「受け入れ部署」に対する具体的な悩みとして、配属先の人間関係で定着が9割決まることや、不満や悩みの発生が現場任せになっており把握できていない環境など、現場への意識改革が必要な点があげられた

参考:エン・ジャパン株式会社「中途⼊社者の定着施策(オンボーディング)についてのアンケート調査」

 

 

コロナ禍によってオンライン形式が推奨される場面や、それに伴うコミュニケーション不足の懸念は、新卒入社者と同様と予想されますが、近年の転職市場の拡大の流れから、入社後に戦力化してからの定着へと繋がるフォロー体制、そして現場環境でのコミュニケーションの実態把握と改善が今後もより大きな課題として臨む必要があります。

 

3.各立場で見る「オンボーディング」と「コミュニケーション」

2020年度の実態調査結果にもあるように、「コミュニケーション」の質「オンボーディング」の成功は密接に関わっているため、コミュニケーションの質の見直しや改善に尽力している人事担当者は既に多いかと思います。オンライン化により、さらに対策が求められてしまっているのが現状です。

 

「コミュニケーション促進の機会を物理的に増やす」という対策が第一に思い浮かぶと思いますが、ここで注意すべきは、ただ闇雲に機会を増やす・場を作るのではなく、どのような課題感がある状態でどのような目的で行うのかを明確にする(=実態を十分に把握した上で計画をする)必要があります。

 

大切なのは、コミュニケーション機会を作る前に、各立場での課題感を事前に明確に把握した上で、状況に合った計画と施策を設けることです。それによって、より抜本的な改善を図ることが可能になります。

 

 

この章では、弊社で実施をした、人事担当者を対象とした個別インタビュー(※1)や、それを基に行った弊社の社内インタビュー(※2)から得られた回答結果も踏まえながら、各立場で考えるオンボーディング時のコミュニケーションの潜在的な課題を紹介していきます。

 

※1)スタートアップ企業から大手企業まで(社員数50名規模~10,000名規模)、現在2021年度も新卒・中途採用を継続して行う人事担当者10名に個別インタビューを実施(実施日:2021年3月)

※2)弊社社員を対象とし、新卒・中途入社社員(~3年目まで)と配属先の受け入れ社員の計10名を対象とした、オンボーディングの実態や課題について個別インタビューを実施(実施日:2021年4月)

 

3-1. 新入社員の立場で考える、コミュニケーション

新入社員

 

新入社員にとって、いち早く配属先の環境へ馴染むことは大切ですが、現場への配属後に見落しがちなのは、どれだけ「自社の情報」を獲得できているかを、周りの既存社員、そして新入社員自身も認識しきれていないまま、業務をこなすことだけが先行してしまうことです。

 

現場配属後に、把握をしきれていなかった「自社の情報」の例として、以下が挙げられます。

 

  • ・組織の構造、他部署が何をしているのか
  • ・質問や相談をしたい時に、既存社員の誰に聞くのが適切か(社内人材の把握)
  • ・組織に定着後に、自分はどのような人材として活躍することができるのか

 

 

上記の認識が薄い状態のまま業務が進んでしまうと、周りとの会話のきっかけが生まれない、他部署との連携が困難など、圧倒的にコミュニケーションのハードルが上がる他、相談できる相手がいない場合には、入社後の自身の役割やキャリアビジョンついての不安を一人で抱えてしまう場合もあります。

 

また、リモートワーク実施中の新卒入社社員の悩みとして、「既存社員の働き方が見えないので、どのようなスケジュールで1日の稼働をしているのかが分からず、精神的不安を感じる」という声も聞かれました。

 

完全リモートワーク実施の企業に入社する新卒社員は、『入社前に描いていた社会人像=オフィスに出社をしての稼働』の経験がなく比較対象がないため、「業務を進めるスピードや温度感が掴めない」「休憩や息抜きをするタイミングが掴めない」などの不安も生じるため、稼働の仕方についても事前の情報として丁寧に伝えることが重要です。

 

3-2. 受け入れ側の立場で考える、コミュニケーション

組織の既存社員

 

現場の受け入れ側の社員が担当する「OJT(On-the-Job Training)」は、実務経験を通して業務知識を身に着けられるよう、個人に寄り添いながら教育を行うことが目的とされていますが、OJT指導といってもただ担当者を選定するだけで簡単に対応できるものではありません。

 

特にOJT指導者から聞かれた声として、以下があります。

 

  • ・何から教えるのが効果的なのか、指導フローやマニュアルなどを事前に提示してほしい
  • ・育成が現場任せのみの状態になってしまうと、育成責任など精神的負担も重なってしまう
  • ・リモートワーク環境下では、問題が起きた時の前後関係の把握や、それを踏まえた今後の指導方法の対策がさらに難しい

 

 

受け入れ側の社員は、新入社員との関係構築から始まり、部署や会社方針に沿った育成計画の実行など、新入社員と組織の間を取り持つ存在となるため、多方面へのコミュニケーションが発生する立場です。また、指導の実施方法や管理体制によっては、担当者本人の実務が滞り負担も大きくなってしまいます。

 

まず会社がどのような目的でどのように人材育成をしたいのか、受け入れ側へ方針を明確に提示することで理解を促進させ、その上で、指導方法の説明機会を設ける、指導担当者や現場の声は常に聞ける体制を作る、などのフォローが大切になります。

 

3-3.人事側の立場で考える、コミュニケーションと対策

組織の人事担当社員

 

新入社員の導入研修(会社組織・概要の説明、新卒者へはビジネスマナー研修)などは基本的に人事担当者が主導、その後は、現場へと引き渡し、配属先の社員が業務を通しての育成(=OJT)を実施するケースが多いかと思います。

 

この体制時に注意すべき点は、配属先へ移行後に”全て現場任せ”になってしまうと、人事側からは「見えない課題」が発生してしまう可能性があることです。実際に聞かれた声として以下があります。

 

  • 新入社員が社内で関係性を作れていない状況を、現場側がそもそも問題として認識していなかったため、離職が起きた場合でも実態の詳細が分からず、人事側で原因を把握することができなかった
  • ・現場の受け入れ体制が整っていなかったため、「誰かが(新入社員を)ケアしてくれているだろう、誰かが既に教えているだろう」という、新入社員の放置状態が発生していることに気づけなかった

 

 

組織体制によって人事側でフォローできる範囲も様々のため、現場にコミュニケーションの醸成を任せること自体は問題ではありません。

ですが、現場の実態を把握を怠ってしまうと、問題が把握できずに対策も取れず、ただただ定着不足や離職という事実にのみ頭を抱える事態に陥るため、現場の声を人事側もキャッチアップできるような関係性を築いておく必要があります。

 

 

新入社員と既存社員の関係

 

新入社員側、受け入れ現場側、双方の立場での改善策として共通しているのは、事前に情報理解を深めた状態で、また、サポート体制を実感できる環境下でオンボーディングに臨むことです。

新入社員は、事前情報を得ることでコミュニケーションをとる上での精神的不安やハードルが取り除かれる他、組織や自身の役割に関する理解度をより早い段階で深めることができ、

受け入れ現場社員は、育成の目的を理解した上で組織からのサポートを受けることで、受け入れの際に配慮すべき行動や意識を変えていくことができます。

 

事前に情報理解が深まる程、そのまま当人の安心へと繋がります。コミュニケーション機会を設ける前に、それぞれの立場にどのような情報や支援があると、より円滑にオンボーディングの体制を組めるかを意識して計画を進めると、新たな視点での自社に合ったコミュニケーション機会や施策を考案できるでしょう。

 

4. オンボーディングに有効な施策例3選

4-1.メンターによる支援制度

メンター制度による社内交流

 

メンター制度とは、社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して、キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決のサポートを行う制度です。離職防止や会社への定着、近年では女性の活躍推進などの観点からも注目をされています。

 

一般的に、評価を行うなどの関係性が発生する直属の上司や先輩ではなく、異なる部門の先輩がメンターとなり、”斜めからの支援”としてメンタル面のサポートを中心に行います。気兼ねなく相談ができる存在がいることで、新入社員の不安や悩みの解消がしやすく、また部門外へと人間関係のつながりが広がることで、社内への定着もよりスムーズなることがメリットです。

 

また、メンターの選定に関しては、制度の導入目的や状況に応じて適正な人材が異なる場合もあるため、事前にマッチング前のヒアリングの実施や、メンターの人材によって接し方に差が生まれすぎてしまわないよう、メンター同士での目線合わせや交流の機会を設けるなども重要です。

 

4-2.ロールモデルの設定

社内のロールモデル

 

ロールモデルとは、社員が目指したいキャリアビジョンや働き方のお手本となる存在であり、そのスキルやワークバランスを学ぶ対象となる人材です。メンターにその立ち位置を兼ねる人材をマッチングさせる場合もありますが、ロールモデルはひとりに限定する必要はなく、新入社員が各観点ごとに社内にロールモデルを見つけ出し、様々な人の良い点を取り入れられる環境が望ましいです。

 

そのためにはロールモデルとなりうる社内人材を新入社員へ周知できるよう、組織として協力、発信する必要があります。方法としては、社内報や、最近では社内Podcastなどの社内交流となるツールを利用することで、コミュニケーション機会を作るきっかけとなる情報提示も兼ねることができ、より効果的です。

 

ロールモデルの存在は、新入社員にとっては社内の人材の理解をはじめ、具体的に自身の入社後のキャリアプランの想定やビジョンが描きやすいことから、組織への定着と安心にもつながります。

 

4-3.OJTフローの可視化と公開

OJT研修を可視化する

 

現場へ配属後のOJT実施時に特に効果的な施策として、OJTを行う際のフローを公開情報として可視化・データ化する事はとても有効です。OJT指導者が新入社員に対し、「どの段階で何を教えるべきか」を整理しながら、教え漏れをすることなく業務指導を行うことができます。

 

フローの可視化方法のポイントとして、OJT指導者視点・人事部視点・昨年度の新入社員視点など、複数の立場の視点を取り入れながら監修を行い、「あの時必要と感じた情報」「新入社員として知っておきたかった情報」などを具体的に洗い出しながら、欠けていた情報の再構成や、必要な関連情報を紐づけて作成することが効果的です。

 

可視化をすることで、新入社員側でも現時点で必要な理解度を把握、予習復習ができる安心材料としても使用することができる他、フローを基に指導者への質問やフィードバックを受けるといったコミュニケーションのきっかけとしても利用できるなど、多方面でメリットがあります。

また、人事側でもOJT進行フローを把握できることで、現場側へのフォローのタイミングをつかみやすくなります。常に更新をしながら複数人で閲覧・管理ができるよう、Googleスプレッドシートなどのクラウド管理ツールを利用するなども推奨されます。

 

5.まとめ

コロナ禍の今、予期せぬ採用計画や方針変更の対応が発生したり、採用市場も変化が予想される中、大きな労力をかけて採用した人材の離職を防ぎ定着を促すことは、組織にとって重要な意味を成します。

 

「オンボーディング」は、組織全体の協力を仰ぎながら体制を整えていくことが重要であると同時に、組織自体の結束や関係性が深まるなど、会社のより良い改善のきっかけにもつなげることができます。

 

今最も優先すべきオンボーディング施策内容や課題感は、会社によって異なるかもしれません。まずはオンボーディングの重要性を改めて考え直した上で、可能な範囲から少しずつ、今の自社に一番必要なオンボーディング施策とは何かを見直してみてはいかがでしょうか。

本記事が、少しでも参考になりますと幸いです。

 

 

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参考資料:厚生労働省:「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル